なみのりとむのサーフィン・サファリ日記

アフリカ、ギニア湾岸在住。毎週末の波乗りがサーフィン・サファリです。

https://blog.tomsurf.com

♫だーれもいない海

【なみのりとむのアフリカ・サーフィンサファリ日記】第5話 ♫だーれもいない海

なみのりとむです。出稼ぎ先のアフリカで、サーフィンサファリなお話。週末、連休、波より日和に、ぼちぼち連載してます。

※前回のお話 サーフシーズン - なみのりとむのサーフィン・サファリ日記

♫だーれもいない海、あなたの愛を確かめたくて〜!

なんて浮かれてスタートしたけど、当地西アフリカのサーフィンは、ほんとうに「だーれもいない海❤︎」ってことが多い。年、半分から1/3くらいはたった1人の「ぼっちサーフィン」を堪能?している。

シーズンやコンディションが整うと、フランス人、レバノン人など、サーファーがやってくる。それから、なみのりとむが本拠とする「ロッジ」と名付けたポイントでは、そのサーフロッジで雇われているアフリカ人三人が、仕事の隙間を見て、ごく短い時間、サーフしている。一応ローカル?!オレ、客?なんか関係がわかんなくなるけど、とてもメローな奴ら。

「イャー、きょうはたくさんのサーファーでメチャ混んでたよ!」っていうのが、広ーいビーチに5人くらい。「みんな来てたよ!」って、6人くらい笑。みんなって、どこまで?!

なので、人を気にしてサーフするということがない。たまに日本に帰ると、人だらけで乗り方がわからなくなる苦笑。

したがって、前のりとかない。間違って前のりしても、「え?!なんのこと?!」とメローすぎる反応。もっとも、間違って前のりする方が難しいのだけれど。

でもこの「♫だーれもいない海」、実はとても怖い。いつもの激しい波のコンディション、いつ、自分がどこで巻かれて、上がってこれなくなるか。どこに流されてしまうか。とにかく沖に流された時、そして大お化けセットを食らった時、ほんとうに心細い。きっと、何があっても、だれも見ていないのだろう。恐怖から、30分もしないで上がってくることも。

ハイシーズンならよいか、といえば、そうでもない。でかい波のシーズンは、何者も寄せ付けないビーチ。しかし波が小さくなってくると、色々なものがビーチにやってくる。ギャル?トップレス?!、、、いや、そうじゃない。毒性クラゲをはじめとした熱帯性の海洋生物、そしてサメ。

特にゆるいオンショア の日は要注意。日本でいう行灯クラゲをでかく、脚を長くしたようなもの。カツオのエボシよりももっと派手な、見た目にやばそうなクラゲ。見えないけど大量にいて、あちこちに同時多発痛が走る、チンクイの超痛い版。オコゼのような海底生物。自分もシーズンになると派手にやられることがある。刺された瞬間、猛烈に痛く、その後激烈にかゆく、いつまでもいつまでもかゆみを引きずる。

そしてまだ幸いにも見ていないが、もちろんサメもたくさん生息しているらしい。♫だーれもいない海、とかいって、浮かれている場合ではない。

2年前、でかい波のリップに吹っ飛ばされた。そして激しくボードごと、水面に叩きつけられた。顔面、鼻をレールに直撃。激痛の中、しばらく波の中をなされるがままに巻かれ続けた。

やっと海面に出られた時、ラッキーにも、インサイドまで流されていた。そしてポタポタ、なにかが滴れる感覚。顔面が血で染まっているのがわかった。なんとか浜に上がったところ、血だらけの自分を見て、みんなが駆け寄ってきた。

そのままベンチにたどり着き、仰向けに。タオルを押し付けて、止血を待った。少しづつ気持ちを落ち着けていく。一瞬の判断の遅れでリップに叩かれたこと。リップから落ちる瞬間。顔面にレールが迫ってくるシーン。気が遠なるほど長く巻かれた海の中。鮮明に蘇った。そして無力感に苛まれ、凹んだ。

少し経って、ロッジのオーナーがやってきた。「よくなったかい?血が止まったとしても、今週はもうやめておきな。レールが逝っちゃってるしね。なーに、少ししたら治るさ。鼻もボードも。」

また少しするとローカルもやってきた。「そんぐらいの怪我でくよくよすんなよ!見ろよ、オレだって、、。」 やはり、でかい波から振り落とされ、右ふくらはぎをフィンで切り、6針も縫う怪我を負ったという。

なんか、心遣いが心に沁みた。「ほんとうにここがだれもいない海だったら、どうなっていただろう。」

自分は昔からどこか一匹オオカミ的な旅人なところがある。ムーミンでいう、スナフキン。でもサーフィン・サファリも1人では成り立たない。

遠い南の国から、日本にいる、大切な波乗り仲間たちが思い出された。

(つづく)