なみのりとむのサーフィン・サファリ日記

アフリカ、ギニア湾岸在住。毎週末の波乗りがサーフィン・サファリです。

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とっても勇敢なサーフィン女子

なみのりとむです。出稼ぎ先のアフリカで、サーフィンサファリなお話。週末、連休、波より日和に、ぼちぼち連載してます。

西アフリカはギニア湾。去年の11月頃から、わがロッジポイントに新たなサーフィン仲間がやってきた。フランス人女子、名前を仮にシルビーとしよう。

フランス人学校の先生として派遣されたシルビー。サバサバしていて、とっても「自立した女性」。そしてどこか冒険家。世間の「おフランス人」のイメージとはまるで違うキャラ。

恐ろしくて年齢なんて聞けない(爆)。たぶん40歳代。でもフランス人老けてるから、30代だったり笑。

当地は大都市から少し離れていて、サーファー人口も少ない。だからいつも朝イチは「ぼっちサーフィン」だった。でかいサイズや不気味なコンディションの時は、誰か来るのまで入るのをためらうこともしばしば。

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しかしシルビーは早起きアーリーバード。なみのりとむ同様、日の出とともにやってくる。朝イチの波友ができた。

その彼女、サーフィンはまだ初心者の域を出ていない。パドルもまだまだ強くないし、なによりドルフィンができない。いくらうねりが小さくなる冬とはいえ、周期の長い、パワフルな当地の波。普通なら怖くてゲティングアウトをためらうだろう。

しかしシルビーは違う。

「あら、きょうは小さいじゃない?!」

「いやいや、確かにいつもよりはよっぽど小さいけど、それでもセットは見た目と違って、やばいサイズだぞ。」

「大丈夫よ、さあ、海入るわよ!」

なかなかの男っぷり笑。

水着とラッシュガードを身に纏うと、待ち遠しいとばかりに、6’4の板でゲットアウトしていく。

・・・と思いきや。ビーチでとむの準備を待っている。スープにセットがじゃんじゃん押し寄せるポイント、どこからアウトに出られるか、どのポイントで波を待つか、なかなか判断が難しい。それに、やはり一人は心細いのだろう。

「あそこを目指そう。切れ目でギリギリショルダーできるから。右にカレント強いから気をつけて!」

同じペースでパドルしても、おいていかれてしまうシルビー。でもぴったりついてこようと必死。

そこへ入ってきてしまったお化けセット。「迷うなー!Vas-y(バジー←’Go for it’の意味)!」

とむも深いドルフィンでかわす。しかしシルビーはドルフィンができない。10本近く続いたセットが通り過ぎると、シルビーの姿はそこにはなかった。波に巻かれ、はるかビーチ側まで持っていかれてしまったようだ。

沖で何本かテイクオフをしていると、ようやくシルビーがやってきた。

「あー、ひどい目にあったわ!こんなにサイズあるようには見えなかったわ。」

「シルビー、ここの波は見た目とは大違いなんだ。それからドルフィンを覚えるといいよ。できなかったらここでのサーフィンは危険だ。」

「そうね、そのうち。」

意に介さないシルビー。

波待ちポイントでもカレントでどんどん右に持っていかれる。ポジションをキープしようとパドル。彼女もぴったりついてくる。

すると大きめのセットがやってきた。明らかなダンパーで、これは危険だ。

「シルビー、これはスルーしよう!」

・・・と言ったのも時すでに遅し。彼女はテイクオフに向けて渾身のパドルを始めていた。ブレイクに近づくにつれフェイスが立ち、サイズは頭半になろうかというサイズで切り立っていた。普通ならここでビビってテイクオフをやめるだろう。

しかしそんな時、彼女はむしろ波に果敢に向かっていくのだ。 「うおーッ!」

波の裏から見てもサイズが大きいのがわかる。 彼女はノーズから突っ込み、またしてもセットの餌食になってしまった。

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はるかインサイドまで持っていかれた。それでも屈託がない。 アウトに戻ってくると、ケロっとひとこと。

「ぐちゃぐちゃにやられちゃったわー」。

いや、すごい根性。

そして、またしても頭オーバーのパワフルなスウェル。今度は少しばかり、グーフィーに切れ目が入っている。しかしフェイスは切り立ち、普通ならやっぱりビビリが入るレベル。

「いくわよー!」

え?それいっちゃうの?

しかしシルビーは果敢にパドル。そしてテイクオフ成功!ターンもクソもない、ひたすらウォールを抜けないとやられる波。ショルダーを走り抜けていった。

アウトに戻ってくると満面の笑み。 「見た見た?!最後はやられちゃったけど、今日のベストライドよ!」

あっぱれ。

浜に上がると、ひとこと。

「きょうはひどい波にはやられたけど、自分としてはまあまあだったわ。」

彼女はペリエを飲みながら、一服煙草をふかすと、

「じゃあまた来週、朝イチにね!」

と残し、街へと帰っていった。

サイズにも形にもとらわれず、果敢にゲティングアウト、そしてテイクオフにチャレンジ。ビビリがない。根性が座っている。

勇敢な女子サーファー。彼女は間違えなく、レベルアップしていくだろう。

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(おわり)

初心者の皆さん、ドルフィンスルー、がんばりましょう! blog.tomsurf.com

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