なみのりとむのサーフィン・サファリ日記

アフリカ、ギニア湾岸在住。毎週末の波乗りがサーフィン・サファリです。

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西アフリカに台風はありません(前編)〜台風発生のメカニズム、サーファーのための気象学

なみのりとむです。出稼ぎ先のアフリカで、サーフィンサファリなお話。週末、連休、波より日和に、ぼちぼち連載してます。

降れば土砂降りの当地、ギニア湾岸。毎年雨季となると、そこら中が水浸し。そして雷、突風。

そういえばここからはだいぶ遠いけど、先日、モザンビークを激しい台風が襲い、南部アフリカでは大きなニュースになった。

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モザンビークを襲う台風。BBC.com仏語版サイトより

なみのりとむも、仲間から「台風なんかきたら、マジ激しそう。」なんて聞かれることもあるのだが、実はここには台風は来ない。絶対こない。そう、当地西アフリカの、ギニア湾岸には気象学的に台風はないのです。

え?どうして?なぜ?

ということで、きょうはちょっとマニアックになるけど、サーフ気象学を少々。これは日本のサーファーのみなさんにもお役に立つ情報かと?!

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激しく降る雨、でも台風は来ない・・・

台風ができる要因にはふたつほど重要な要素がある。一つは台風を発生させる「熱エネルギー」。

大気中に含まれる水分がもつエネルギーを「潜熱」という。潜熱とは、氷が水に、水が水蒸気になるときに放出される熱。注射のときにアルコールを塗られてスーッとする、あれ。海上がりのシーブリーズでスーッと感じる、あれ。揮発性の高いアルコールが、肌の熱を奪って蒸発している。だからっ「スーッ」とする。夏の日の「打ち水」で涼しくなるのも同じ原理。その熱量が潜熱。

よく天気予報で「熱帯低気圧」という言葉を耳にするけど、この「熱帯」というのは、潜熱によってどんどん発達する低気圧であるっていうこと。普通の低気圧、いわゆる「温帯低気圧」が、気温の違う空気の塊が存在することで生まれる「傾圧不安定性」に起因するのと対照的。

地球大気の活動は、赤道付近の高い熱エネルギーが源泉。頭上の真上からギラギラ照らす、入射角の高い灼熱の太陽が海水を温め、大量の水蒸気を生む。だから熱帯地方は、実はトロピカルなイメージとは違って、いつも厚い雲で覆われている。

そんなことで、当地西アフリカ。ギニア湾岸は北緯0-4度だから、高い潜熱を放出している。水蒸気を含んだ雲がたくさんできる。上昇気流で雲がどんどん上空に登っていく。入道雲、つまり積乱雲の発生でござい。

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入道雲、がんがん発達中!

どんどん空気がのぼっていっちゃうから、どんどん空気がうすくなる。そう、これが気圧の低い状態、つまり「低気圧」。そこに足りなくなった空気が周りからどんどん吹き込んで、さらに雲が発達する、というわけ。

↑こんな説明を聞いたら、赤道上では台風がバンバン生まれそうな気がしてくるでしょ???・・・でも台風は生まれないのです。

もう一つの台風発生には、どうしてももうひとつの要素が必要なのです。それは・・・

(次回につづく)