【なみのりとむのアフリカ・サーフィンサファリ日記】
第9話 ピークから行かなくちゃ!
なみのりとむです。出稼ぎ先のアフリカで、サーフィンサファリなお話。週末、連休、波より日和に、ぼちぼち連載してます。
晴れた日のビーチ。この日は予報どおり、珍しくうねりが小さな日だった。とはいえ、あいかわらず安定のダンパーコンディション。そしてひとたびセットが入ると、頭オーバーの危険なショアブレイクはいってくる。そのタイミングで捕まってしまうと、まず10発はくらうことになる。
とにかく波にはショルダーがない。特に大きなうねりには。セットはゲットアウトとドルフィンでどうにか抜け耐えて、こぼれてきた小ぶりの波をうまく狙わないと。
そんなふうに波待ちをしていると、たまにやってくるレバノン人のおじさんサーファーが、見慣れないソフトボードで入ってきた。そこへバッチリのタイミングで頭サイズのダンパーセット。
ドッカーン!
あーあ、やられてるよ。
波が収まって視線をそちらに向けてみると、、、
ひぇ〜!板が真っ二つになってるよ、、、。
きょうは波が小さい日だというのに。
こちらの波はいつもこんな感じだから、パドルやドルフィンは鍛えられるけど、波乗りはちっとも上手くなっていない。まともに乗れる波がほとんど来ないのだから苦笑。
でも選べば際どいテイクオフを決めて、切り立ったショルダーを抜け、たる目のセクションをカットバック、アップスンとパンピングでなんとかつなぎ、インサイドまで。
トリミングにロングライドは得意。ここではそこまで乗ってこれる人は他にいないから、ロングライドできるとちょっと気分いい。こんなところで喜びを少し感じて、自分を励ましている。
沖で浮かびながら、三年前、ここに着いた時のことを思い出した。ギロチンダンパー、カレント、巻いてくる波、狭いテイクオフゾーン。その頃は巻かれるのが怖くて、ピークから逃げて、ショルダー引っ掛けて逃げるような波の取り方ばかりを考えてた。
でもうまく行かない。少しでもショルダー側に外すと、波が立ってこないから、テイクオフできないのだった。
・・・と、そこでロコ三人トリオが入ってきた。そしてやばいピークからいって派手にやられたり、そうかと思えば派手にリップ決めたり。両極端なライディング。
そして、セットをショルダーで逃したなみのりとむを見ると、ひとことこういった。
「だめだよー、どんなにブレイク早くてもピークからいかなきゃ!」
・・・そうだ!ピークからいかなきゃっ!早い波だからって、肩引っ掛けることばかり考えてた。それじゃ波取るの難しいし、逆に捕まっちゃう。
どこかデジャヴな感覚。そうだ、あの時感じたこと。もう10年以上も前、サーフトリップで北茨城のローカルポイントにお邪魔した時のこと。
その日はピークからかなりシャローな波が立っていた。ピークからテイクオフが決まればカッ飛べる、相当しっかりしたうねりだった
しかしそこはローカルが集団で抑えていた。なみのりとむはショルダーに逃げて、テイクオフを試みたが、ここの波はどピークから行かなければ、置いていかれるか、厚いスープに捕まってしまう。ショルダーからでは決してメイクできない波であることは明らかだった。
夕日が落ち、ローカルが上げったわずかの時間にピークに移動。波の素晴らしさを確かめた。・・・そう、ピークから行かなくちゃ!
書けば長いが、そんなことが頭をよぎったのはほんの数秒だった。ここの波は、その茨城のブレイクのように美しいものではなく、もっと下品で野蛮だった。しかし巻かれることを怖がってはいけない。Go for it!それからは、波をしっかり選びつつも、できるだけピークからいくことを意識した。
巻かれること数回、しかしなんとかショルダーを捉えることも数回。ロコを含め、ガンガン乗れていたコンディションではなかった。みんな振り落とされ、巻かれ、苦戦していた。自分もそれなりにはテイクオフできるようになっていった。ここの波が少しだけわかってきたような気がした。
ピークから行かなくちゃ! メンタルが大事。
この日は何か、一段階違う自分が生まれたような感覚を覚えた。帰りの車、時折、鼻から垂れてくる海水が心地よかった。
(おわり)